アドラー心理学では不適切な行動という言葉を使います。
悪い行動とか問題行動という言葉は、主観的な判断を含むため、アドラー心理学では、このような言葉を使いません。
アドラー心理学は、個人の行動を共同体との関係でとらえ、共同体にとって破壊的か否かという尺度で考え、不適切な行動という言葉を使うのです。
不適切な行動をなぜ行うか
不適切な行動を行う場合には、不適切であると自覚がなくて不適切な行動を行う場合と、自覚があって行う場合があります。
例えば幼児は、分からずに不適切な行動を行います。
しかしながら小学生以上では、不適切な行動であると知った上で不適切な行動を行います。
ではなぜ、不適切な行動であることを知りながら不適切な行動を行うのか。アドラーは、適切な行動で目的を達成する勇気を失っているためであると考えます。
不適切な行動はなぜ続くのか
不適切な行動が続くのには目的があると考えます。
不適切な行動を続けるのは、これにより、何らかの目的を達成するために続けられると考えます。
不適切な行動の5段階
不適切な行動には5段階があります。
- 1. 称賛を得る
- 賞賛を得ることを目的として行動することが問題であるとは余り考えないのが通常でしょう。しかし、アドラーはこれを不適切な行動であると考えます。例えば賞賛を求めて子どもがゴミを拾った場合、人が見ていなければ、ほめられなければゴミを拾わない子どもになってしまうので、そのような目的ではなく、共同体にとってプラスとなるからゴミを拾うのが適切であると考えます。
- 2. 注目を集める
- 注目を集めるために叱られようとすることがあります。
それは、他の適切な手段を知らないために不適切な行動により相手との関係性を持とう、居場所を作ろうとするために行われます。注目を集める目的があるので、叱っても叱っても、やまないのです。 - 3. 権力を握る
- 注目を集めるために不適切な行動を行う子どもに対し、より強固に対応して押さえつけたり、無視すると、子どもはよりエスカレートし、権力闘争を仕掛けてきます。子どもが権力を握る目的で行動しているかどうかは、相手の気持ちで分かります。子どもの行動により、親などが本気で腹を立てるようであれば、子どもが権力闘争を仕掛けてきたと理解します。
- 4. 復讐をする
- この第三段階で相手が不適切な対処をする(徹底的に権力的に押さえつけるなど)と子どもは復讐をするために行動します。例えば、親に復讐するために不登校になったりします。権力闘争で勝てないと分かると、復讐の段階に入ります。
- 5. 失望させる
- この段階で相手が適切な援助を行わないと、次に失望させようとします。
ひきこもったりします。
どの段階にあるか?
どの段階にあるかは、相手の感情を聞けば分かるとされています。
- ほめたくなれば賞賛を求める段階
- うるさく感じれば注目を引こうとする段階
- 腹が立てば権力闘争をしかける段階
- 傷ついたいやな気持になれば復讐の段階
- 絶望した気持ちになれば失望させる段階
また、不適切な行動を取っている本人に、聞いてみるのも一つの手です。
このようなことはありませんか?
次のようなこと、ありませんか?
- 褒められるとうれしい
- 誰でも褒められるとうれしいですが、褒めてもらうことばかりに目が向くとよくありません。芯がなくなってしまいます。エニアグラムタイプ5の人は地味ですが、人の評価を気にしていないので、分かりやすく、信用できると思うことがよくあります。
- 復讐しようとしていませんか
- 夫婦関係でも、友人関係でも、うまくいかなくなると、嫌がらせ(小さなことでも)をしたくなったりします。かわいいものならいいと思いますが、それを超える場合には、よく考えてみる必要があります。続けていると、関係がどんどん悪化していきます。悪い感情をまき散らしてばかりいると、良い関係は作れません。
- 権力争いになっていませんか
- 些細なことで喧嘩となり、おさまりがつかないときは、権力争いになっていることが多いです。喧嘩になったときには、権力争いになっていないかを考えた方がいいです。楽しい喧嘩はいいのですが、収拾がつかない喧嘩は、構造を考えてみる必要があります。